通報したのはだれ?台風で氾濫した多摩川からホームレスの男性を救出

2021年10月14日木曜日

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ホームレスの男性を台風からの救出

■ホームレスの人たちとの思いで

もう4年前のことになる。 

2017年10月23日、朝一番、目にしたのは台風21号の影響で氾濫した多摩川のニュースであった。多摩川の下流域はとても幅が広い。その間には川を割って陸になる場所がたくさんできる。そういった中州と呼ばれるところに、川の増水のため数人が取り残されてしまったというのだ。テレビでの映し出されていたのは、そういった人たちをまさに救出しているところであった。

「多摩川で9人が取り残される 消防が救助」『NHK NEWS WEB(10月23日 10時33分)』

しばらくその救出劇を眺めていると、数年前自分も多摩川でホームレスの方々の支援活動に参加した時のことを思い出した。

今回とは場所は違うが、そこにも中洲があった。僕は支援活動をしている先輩と共にホームレスの方々に挨拶に回った。橋の下で、酒ビンを横に置き、厚手の服を着ながら寝泊まりしている人もいれば、川べりにテントを張っている人、テントの横に畑を作り、鶏と犬を飼って生活している人もいた。テントの中にテレビとラジオを置き、アンテナを張っているのを見たとき、自分よりもしっかりしているのではないかと感心したものだ。(あとドラクエの村、町ではなく村に入ったみたいだった。まさにそんな感じだったから)

気さくに話してくれる人もいれば、警戒心の強い人もいた。

台風21号は各地で多大な被害を与えたが、この取り残された9人全員が救出されたようである。 

■台風被害からの救助要請を見て思うこと

「台風21号 “超大型”で上陸、各地で被害 5人が死亡」『TBS NEWS(10/23(月) 19:16配信)』

ニュースでは「取り残されているとの通報があった」とか「とりのこされているとの情報があった」とさらりと書いてある。僕たちは通りすがりの人が、見つけて通報したのだろうと考える。いや、本当にそうかもしれない。河川敷を散歩する人は多い。ジョギングやサイクリングをする人もいる。だが、この日は暴風雨だ。だからもしかしたら、いつもホームレスの人たちを気に掛け、寒い日も暑い日も、体調はどうだとか、元気でいるかとか挨拶して回っている人たちかもしれないと思ったのだ。僕たちは一般的に、何気なく偶然の人の善意を想像の基本とする。しかし、善意とは、おおよそ積み上げられた個人個人の日常なのだ。

これは憶測でしかない。僕の思い出だ。だが、彼らなら台風接近のニュースをホームレスの人たちに伝えに行くだろう。ホームレスの人たちは避難はしないに違いない。どこにも行くところがないのだから。それでも彼らの身に危険が及んだら、そんなこともあろうかと、と救助を要請するのだろう。

僕は何もそういう断定をしたいわけではない。結局のところ、彼らが困っているのを発見した人がいることに僕の関心はある。

ネットでは、ホームレスの人たちに対する批判が絶えない。そして「人知れず流されたヤツもいるだろう」と言ってみたりする。

しかしそうではない。彼ら一人一人が覚えられているのだ。名前も、顔も、そしてその仲間達も。

僕も数年前だが、握手をして別れた人の顔と名前をまだ覚えている。その手は冷たく、黒ずんで硬かった。満面の笑みだったのが印象的だった。

恐らくは私たちは同じ人間なのだ。そういう動物なのだ。暇つぶしに、心のなかで彼らを蔑んでみるのもいいだろう。だけれど、僕たちは彼らのような人たちでも一人一人が覚えられている、そういう社会に住んでいるんだと安心してみる必要もあるのではないか。

気まぐれに、他人を蔑んでみればよい。

だけれど、懸命に助けようと人生をかけている人がいる社会に僕たちはいるのだ。

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