DaiGo氏批判は正しいのか
１．松丸亮吾とホームレス差別メンタリストDaiGoとの関わり
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6．自分が許せるものと社会に許されないもの
どちらの価値観も尊重され許されるべきなら、DaiGo氏の今回の発言も許されるべきではないか。
DaiGo氏を追い詰めることも差別と同じ感情からくるのではないか。
それは当然の指摘です。
ICTの発展、SNSの普及とともに増加するインターネットによる誹謗中傷は差別・ヘイトクライムと同様、社会問題の一つです。
DaiGo氏に改善を求めた支援団体も、彼の思想や発言によってホームレスの人に危険が及ばないように提言したにせよ、その目的を逸脱してDaiGo氏を誹謗中傷する材料を与えたとすればそこにまったく責任がないとは言い切れません。
私が常々思っていることの一つに、権利擁護のために誰かを責めるのは本当に正しいのかというものがあります。
社会福祉士国家試験の問題を二つほど解いてみてください。
答えがすぐ見えないように、ある程度文章を書いてから提示いたします。
すぐに答えを知りたい人は下記のURLからサイトに飛んで答え合わせをしてみてください。
問題１（ 社会福祉士試験 第29回（平成28年度） 相談援助の基盤と専門職 ）事例を読んで、児童養護施設のA職員（社会福祉士）によるB子への自立支援の観点から現時点でとるべき対応として、より適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕B子（17歳）は、実の母親と継父からの虐待で児童養護施設に入所している。母親と継父の養育に対する意識や生活状況はかなり改善されてきた。母親と継父は、B子と一緒に暮らしたいと言っている。A職員が、B子の意思を尋ねたところ、親の気持ちは分からなくもないが、施設退所後は一人暮らしをしながら大学に進学したいと言う。その一方で、大学には進学したいが、一人暮らしには不安があるとも言う。
1 .現在の自分の学力や生活力を自分自身で客観的に見直すよう求める。
2 .親の理解を得るため、自分の意思を、自分の責任で親に伝えるよう指示する。
3 .大学進学と一人暮らしについて考える前に、就職して経済力をつけるよう助言する。
4 .生活する上で身についていない知識やスキルについて、職員とともに学ぶことを助言する。
5 .どうすれば大学進学と一人暮らしが可能になるのか、活用できる資源の情報収集を一緒にしてみることを提案する。
社会福祉士の過去問「第26295問」を出題 - 過去問ドットコム (kakomonn.com)
問題２（社会福祉士試験 第28回（平成27年度） 相談援助の基盤と専門職）事例を読んで、Dスクールソーシャルワーカー（社会福祉士）による助言として、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕小学校2年生のE君（7歳）は、授業中に教室内を歩き回ることが頻繁にある。担任がE君の離席を注意すると、E君はパニックを起こし、泣き叫びながら教室の外に飛び出してしまう。授業の進度も大幅に遅れていることから、複数の保護者から担任の交代を求めるクレームが校長に寄せられている。校長は、教育委員会にスクールソーシャルワーカーの派遣を要請し、助言を求めることとした。Dスクールソーシャルワーカーは学校を訪問し、授業観察を行った。
1 .校長に対して、E君を転校させる必要性があると助言する。
2 .校長に対して、保護者からのクレームは気にする必要がないと助言する。
3 .校長に対して、個別的な対応をするため、特別支援教育支援員配置の必要性があると助言する。
4 .E君の担任に対して、E君の指導を厳格にするよう助言する。
5 .E君の保護者に対して、家庭でのしつけを徹底するように助言する。
社会福祉士の過去問「第26447問」を出題 - 過去問ドットコム (kakomonn.com)
いかがでしたでしょうか。
社会福祉士、ソーシャルワーカーの仕事や考え方もなかなか面白いと思いませんか？
基礎知識を提示しないでいきなり問題解けというのは本当は悪いことですね。
正解できなくても仕方がありません。
ただ、わかってほしいのは社会福祉の理念は一般的な考え方、物事のとらえ方と少し違うところがあるということです。
個人的には実際にこういう理念が一般的にも広まってほしいとは思っています。
しかし人生相談においても、教育方法においても、根性論とか自己責任論とは一線を画していますし、放任主義とも違います。
誰かを悪者にしたり、責任の追及をするわけでもありません。
ということで問題1の答えは4と5、問題2の答えは３が正解です。
根拠もなく先走ってはいけませんし、誰かを責めてもいけません。
本人や周囲の関係者とコミュニケーションを面倒くさがらずにこまめにとって永続的かつ根本的な解決を目指すのが社会福祉の傾向です。
例えば今回の炎上の件で、社会福祉士の国家試験の問題を作ったとしたらどうなるでしょうか。
問題3 路上生活者の権利擁護に従事するA社会福祉士の初期対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕著名人であるB氏がSNSの発信により、路上生活者を批判した。SNSの大半のユーザーがB氏の発言を批判し、B氏の一部のフォロワーが対抗して論争になっている。テレビのニュースでは「B氏の発言により路上生活者者への差別意識が高まり今後暴行などの事件に発展する恐れがある」と報道されている。
1 .自分のSNSアカウントから、誰もが閲覧できる形でB氏のアカウントにリプライし発言の撤回を求めた。
2 .即座にB氏の発言が危険だと批判する声明文を誰もが閲覧できる形でインターネット上に掲載した。
3 .B氏の発言の意図と報道の真偽を確認する話し合いのために連絡を試みた。
4 .政府関係者に路上生活者の支援を強化するように提言した。
5 .B氏の罪を償わせるために路上生活者のための炊き出しに同行する計画を立てた。
私には学校で習うソーシャルワーカーと、特にインターネットで活動するソーシャルワーカーが全く違うように見えます。
ソーシャルワーカーとは、社会正義により、そこに被害者と加害者がいたとしても、双方に敵意を示さず、贔屓もせず、争いを大きくせずに問題と向き合う職業だと教えられています。
確かに実際の社会福祉の現場は教科書通りにいかないことがほとんどです。
しかし教科書や試験に出ていることを理念の上では緻密に守っているのも事実です。
緊急声明を出した支援団体が軽率だとは言いません。
適切でないとも言いません。
実際の社会では福祉団体も細分化されていて、ホームレスの支援団体とSNS上での権利擁護を担う組織が分かれており片方が未発達であるため、不完全に見えるのかもしれません。
ホームレスの人を守る力と、著名人の問題発言を是正する力のバランスが取れていないのかもしれません。
ただ、私は実際の現場の社会福祉士とSNS上での社会福祉士が全く別人に見えると、単純に疑問に思うのです。
SNSでのソーシャルアクションで有名なもので言えば、MeToo運動が思い浮かぶのではないでしょうか。
主にセクハラ被害を受けた女性がTwitter上で告発し、それに呼応して多くの賛同者が団結して訴えに参加するというものです。
これ自体は非常に強い影響力で被害者や似たような境遇の人を助ける有力なソーシャルアクションではありますが、一方でこれまで問題のなかった職場でも関わり合いへの萎縮から、上司と部下、男女の関係が疎遠になってコミュニティーの破壊までとはいかなくとも、形骸化につながっているという報告があります。
SNSの目的が発信者の意図しないところで被害を及ぼしているとすれば、影響力のコントロールを失っていることから、高度経済成長期に問題となった工場の公害にちなんで、ICT時代が生んだ「ICT公害」、「SNS公害」と呼べるのではないでしょうか。
YouTubeにしても他のSNSにしても、倫理に反することでビジネスできてしまう不完全なシステムが、炎上問題を起こした本人を必要以上に攻撃してしまう要因になっていることは否めません。
また、私刑をもってしなければ差別発言を止められない法律の不備もあります。
SNSに炎上商法を即座に抑制するシステムがないために、当人の言動だけにとどまらず、人格を傷つけるなど、本人の無力化、追放という極刑に至るまで攻撃が過剰になってしまうのも問題でしょう。
どこかで思想と思想の紛争が起こった場合、なるべく双方に被害の少ない方法で、また将来禍根の残らない内容で解決するに越したことはありません。
DaiGo氏を批判するその言葉の刃が、また別の人をどこかで傷つけていないと言い切れるでしょうか。
私たちが誰かを裁くときに、それがその時の正義だったとしても、その正義が私たちの大切な誰かを傷つけてしまうかもしれません。
そういえばこのブログを書いている途中、今回のDaiGo氏の炎上問題を、オウム真理教の起こした事件と結び付けた記事を見つけました。
少し時間がかかりますが、これについては反論する記事を書きたいと思います。
読んでいただきありがとうございました。
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