伊東乾さんの「メンタリストDaiGoとオウムは似てる」が無理筋である理由

2021年12月18日土曜日

★Bblock ★recommend 社会

t f B! P L

乱用されるオウム真理教とサリン事件と麻原彰晃

大人は言葉と説明力を失ってしまったのか?

以前、メンタリストDaiGo氏の炎上問題を批判した私ですが、行き過ぎた批判もまた現代社会の問題であるとして話を終えました。

【メンタリストDaiGo】ホームレス差別で炎上②彼が本当に言いたかったこと

当記事を執筆するために情報をあさっていて見つけたのが、今回のテーマです。

伊東乾さんの「メンタリストDaiGoとオウムは似てる」が無理筋である理由

メンタリストDaiGo氏とオウム真理教麻原彰晃が似ているというのです。

下記にある記事の著者は伊東乾氏です。

「オウム」麻原彰晃に酷似する「メンタリスト」商法(2021年8月16日)|BIGLOBEニュース

この記事に書かれていることは正しいところもあります。

しかし解釈の点で事実とは大きな乖離があるように思います。

具体的に説明していきましょう。

■メンタリストDaiGo氏のフォロワーは科学を求めているわけではない

伊東乾氏は「偽サイエンスの見分け方」を述べていますがそもそもメンタリストDaiGo氏のフォロワー方は、彼から科学を教わろうとしているわけではないと思われます。

科学に基づいて物事を解決しようとも思っていません。

むしろ科学により立証されたことを始めもろもろの決まり事や既成事実に反発している人たちとみて取れます。

自分がこうなったらいいなと望んでいることも、すでに科学により立証され否定されてしまう。

だからメンタリストDaiGo氏の"新しい科学"によって願いが叶えられるといってほしいのです。


コロナで自粛を余儀なくされ息苦しい。

自由に外出してみんなでワイワイ遊びたい。

でも科学的数値がコロナが危険であることを立証してしまっている。

そんな時、メンタリストDaiGo氏が"俺の化学"により仮想的にコロナなんて恐れるに及ばないといってくれたら気持ちが楽になるのです。

そしてこれまでの科学が何度か訂正されてきたように、彼の根拠のない言葉にももしかしたら現在証明されていることよりも正しいことが後々わかるかもしれない。

ですからメンタリストDaiGo氏が科学のプロではないから聞く価値がないという論法は彼らフォロワー方には通用しません。

おそらく科学の道を志すという目的でメンタリストDaiGo氏を信奉したり擁護したりする人はいないのではないかと思います。

多くの人は科学に興味がなく彼の言葉を求めているか、もしくは科学ではないと知っていながらその事実に目を背けて癒しと解放を求めているのだと推測できます。


私の友達にも親の虐待で心に傷を負っている人がいます。

そしてメンタリストDaiGo氏のファンです。

記事に取り上げられた生活相談の質問者と同一人物かと思われるほど似た境遇にいます。

もしや同一人物ではと思ってしまったほどです。


なぜそのような境遇にいた私の友達がメンタリストDaiGo氏に傾倒するようになったか。

それは決して科学では解決してくれない複雑な人間関係の問題を、メンタリストDaiGo氏の偽化学が耳を傾けてくれたからなのです。

無論、この偽化学も私の友達の問題を解決してはいません。

しかし、私の友達がそれで生きる希望を得て頑張れたことは事実です。

これこそまさに嘘から出たまこと、錬金術が金を生み出せない偽化学の上に成り立っていながら副産物として火薬や妙薬を生み出したこと、ジュールベルヌの「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる」に表される、

偽化学が今現在の発展途上の科学に勝り、ミクロな空想がマクロな理論に打ち勝った一幕であり、世界の真理なのです。


それでは伊東乾氏の記事に3つの反論をしてから、DaiGo氏がオウム麻原彰晃と似ているという論題の本丸まで崩してみたいと思います。

1.メンタリストDaiGo氏の偽化学は一種のエンタメ

メンタリストDaiGo氏が偽化学だから意味がないという伊東乾氏の言葉の何が的外れかと言いますと、

彼がメンタリストとしてテレビで脚光を浴び始めた頃、手品のようなものをしていましたがあれから何も変わっていません。

「人の心を読める」と豪語して相手が何を選んだか相手の表情だけで言い当てるというパフォーマンス。

あれには種も仕掛けも"ある"ことを自ら認めているわけですから、実際には科学ではありません。

みんな分かっています。

DaiGo氏のファンの多くは彼の科学に魅了されているのではなく、彼がテレビに出ていた有名人だからついて行ってるのです。

昔お茶の間を沸かせたアイドルとインターネットでやり取りできる!と喜んでいる感覚に似ています。

例えば、歌が上手くなくてもアイドルはできます。

アイドルは歌で売っているわけではないからです。

歌手だってみんながみんな歌が上手いわけではありません。

でも歌手なのです。

DaiGo氏も同じです。

別に科学ができるわけでも、特別頭がいいわけでもありません。

そういう"売り方"をしているだけです。

ファンの人たちもそんなことはわかっているし、気にしていません。

テレビでもYouTubeでも、クイズ番組をしている人たちに重要なのは"生"でないところです。

台本と編集が大切なのです。


彼のIQが高いか、頭の回転が速いかと言われれば確かに、もしかしたら本当にそうかもしれません。

ただIQというのは集中力やモチベーションによって変わると言いますし、テストのときにIQを高められても普段は隙だらけということもあり得ます。

以前警察関係で働いていた人から聞いた話ですが、非行で逮捕歴があり、少年院にも行った少年が、彼はIQが110ほどで一般より高かったので、少年院や周囲の人の援助により大学に行くことができたそうです。

このようにIQが高いと社会復帰などでもしかしたら有利に働く面もあるかもしれませんが、逆を言えばIQが高いからと言って後先のことを考えられるわけでもないのです。

IQが高くても、基礎知識が乏しく、教養がなければ、「これだ!」と自分が正しいと思い込んだことに突っ走って後に大けがをすることもあります。

ですからIQが高いことを本当に頭がいいといっていいのか疑問に思います。

むしろ今回IQが高いと豪語してきたメンタリストDaiGo氏が軽率な行動をとったことにより、IQが高いと言いづらくなった人もいるのではないでしょうか。


その上で、DaiGo氏が世間の中で知能が平均的でも、彼を頭がいいと思うことは自由ですし、"自分より"頭がいいと称賛することも自由なのです。

世の中には楽しみが必要です。

そして悩みを忘れさせてくれる存在が必要です。

先ほども言ったようにそれは必ずしも真実とは限りません。


人には自己解決する力が潜在しています。

自己治癒する能力があります。

心理学でいうレジリエンスです。

DaiGo氏が偽化学だとしても、この人間各々に秘められた実在する力を、彼が彼の言葉を聞いた人々の中に呼び起こしたことは紛れもない真実ではないでしょうか。

2.専門家でなければ科学を語れないわけではない

二つ目の伊東乾氏の間違いは科学を専門家の専売特許のように扱っているところです。

また何かを話すのに学歴が必要であるという観点も危険です。


確かに学歴は専門性について簡易的な証明書になります。

そして実際、研究論文を完成させたことはその人に深い造詣を与えます。

それ自体は事実ですが、研究も卒業もしていなければ語る資格はないというのは完全な間違いです。


例えば裁判員制度というものがあります。

まだ未熟な制度かもしれませんが、意図としては専門職でひしめき合う法廷に世間一般の観点を取り入れることです。

なぜ専門家だけではだめなのか。

それは専門性には総合的で広い観点が欠けてしまうからです。

私がこういうと、いや裁判員裁判は間違っている、素人を使うあれは愚策だと部分的にこの制度を否定する人がいるかもしれません。

でも考えてみてください。

裁判員制度を導入したのは他でもない高学歴な専門家たちですよ、と。

それは高学歴と専門性を否定することになりませんか、と。

ですからどちらに転んでも高学歴・専門家しか語れないという論法は間違っていることになります。


科学者の発明を商品にして大衆向けにするのは大衆の一人です。

クラシック音楽も民族音楽を吸収することによって多様に変化し、音楽的な発展に貢献しました。

もし議論が専門家だけのものになってしまえば、多角的な見地を失いその分野の成長は止まってしまうのです。

3.メンタリストDaiGo氏は犯罪を犯したわけではない

確かにDaigo氏は間違った知識で間違ったことを語りました。

しかし、実際にホームレスの人たちに暴言暴力を行使したわけでも、排除するように命じたわけでもありません。

誰かに訴えられて逮捕されたわけでもありません。

彼はわがままな子どものように狭い見識の中で自分の好き嫌いを言っただけです。

対してオウム真理教の何が問題かというと、実際に犯罪を犯し、多くの人の生活を脅かしました。

もしオウム真理教が自分の信条を語るだけだったら、それがある程度極端でも世間から批判を受けるだけで済んだでしょう。

批判を受けるだけなら今のDaiGo氏と同じです。

しかし実際は違います。

オウム真理教は犯罪を犯しました。

オウム真理教の被害者に寄り添う坂本弁護士を殺し、その家族まで皆殺しにしました。

幼い子どもも皆です。

修行だといって信者を水に沈めて殺しました。

裏切り者も殺しました。

財産も没収しました。

地下鉄や民家にサリンをまき、多くの人の命と健康で楽しい生活を奪いました。

オウム真理教を犯罪集団、テロ組織、反社会勢力の代名詞として使っている以上、伊東乾氏のDaiGo氏とオウム真理教を同列に語ることはできません。

思想と行動では天と地の差があります。

そしてそれは偽化学と同様の偽証であるばかりでなく、法律と秩序に反することです。

■オウム真理教を軽率に使いすぎる危うさ

オウム真理教はカルトの代表格ともいえますが、その上層部は日本社会を震撼させた犯罪組織です。

当時、連日のニュースを聞いていた人ならその恐怖を身をもって知っているでしょう。

今日見られる日本人の宗教への不信感を形作ったといっても過言ではありません。

ですから社会の悪者になりつつあるDaiGo氏のイメージへの追い打ちとしては非常に簡単な手法です。

簡単であり短絡的です。

伊東乾氏の言い分によると、DaiGo氏とオウム真理教の教祖が似ている点は、

  • 巧みな言葉を使ってカリスマ性を発揮すること
  • 年齢が30代後半であること
  • 間違った方法で収入を手に入れたこと

概ねこの3つです。

しかしカリスマ性自体をどうして責めることができるのでしょうか。

カリスマは時代の潮流に乗った世の中で担ぎ上げられた人がなるものです。

そのあまたのカリスマの中からあえて麻原を選ぶのでは根拠が薄いです。

他にも似ている人はたくさんいるはずです。

例えばビートたけしとか。

彼は若い頃から殺人事件までネタにする不謹慎なギャグで注目を集め、30代になってたけし軍団を結成し、ご意見番にもなりました。

彼にはいいところもあれば悪いところもあるでしょう。

DaiGo氏と似ているところもあれば違うところもあります。

でも共通点を探すのになぜいきなりオウム真理教なのでしょうか。

歳のことを言えばブッダもキリストも30歳を超えてから本格的に社会に出ていきました。

30歳になると自然と本人の中にふつふつと信念が沸き起こってきたり、社会に対する反感を募らせ聖人のようになるのでしょうか。

いえ、要因はそれだけではありません。

30歳を超えると世の中がその人に対して一定の信頼を置くようになるからなのです。


そして間違ったお金の稼ぎ方と言いますが、今回の発言は確かに悪いことだったでしょう。

しかしその差別発言によって活動停止になり、収入減を失いました。

お金を稼いでいません。

失ったのです。

そしてこれまでやってきたのは間違ったお金の稼ぎ方でしょうか。

伊東氏がいう偽科学を延々と語ってきたかもしれません。

しかし、それを悪と断定はできません。

人がどのように心情を語ろうと、それに根拠があろうとなかろうと、思ったこと、信じていることを発言するだけでは罪に問えないのです。

世の中に氾濫している啓発本やノウハウ本の中にも全く役に立たないものも、科学的に否定されているものも、あやふやなものがたくさんあります。

セミナーもそうです。

政治家もそうです。

でもそれだけでは法で裁けないのです。

そして法で裁けないからと言って、伊東乾氏がご自分の倫理観を頼りにしても、DaiGo氏だけを責めることもできなければ、彼を拘束する権利もないのです。


私はオウム真理教やナチスドイツなどを悪の代名詞として乱用し、安易に断罪していくことにも危険性を感じます。

かえってオウム真理教を軽々しく扱っているようにも観られますし、大したことのないような印象を徐々に社会に植えつけていくことにもなり得ます。

また、似ているからといってカテゴライズすることにも危険性を感じます。

種々の問題点は似ているところもありますが時に微妙に、もっぱら大きく違うからです。

その微妙または大きく違うところをないがしろにすれば、個人を納得させることも問題を解決することもできません。

こうして無視されてきた小さな問題が寄り集まってコミュニティーを築き、危険な思想の塊になっていくのではないでしょうか。

見方を変えれば多くのフォロワーを抱えるDaiGo氏らインフルエンサーは人々がカルトへ流れていくのを抑えるセーフティーネットもしくはストッパーになっているとも考えられます。

実をいうとDaiGo氏に傾倒したという私の友人は、カルト的な宗教の家庭で生まれた宗教2世(カルト2世)問題という背景を持っており、親から虐待を受け、そこから逃げ出そうとしていたのです。

ともすればDaiGo氏の存在は私の友達にとって、そのカルトによる被害よりは健全であったといえます。

逆説的に言えば、一度できたコミュニティーを何か問題が起こったからといって安易に攻撃し破壊していくことは、問題に苦しむ人々の逃げ道をなくし、そういったカルトやテロ集団を盛り上げる土壌を作っていることにもなります。

以上のことから、伊東乾氏の指摘はDaiGo氏とそのフォロワーへの知識不足、いえむしろ人間の心理への知識不足と言っておきます。

そして伊東乾氏の盲目的な嫌悪感を利用した「臭いものにはふたをしろ」と同じ理屈は、結果的に危険な宗教(カルト)と偽科学の助長につながるでしょう。


おすすめ記事:

メンタリストDaiGo氏はなぜホームレス差別発言をしたのか。メンタリストDaiGo|ホームレス差別で炎上②本当に言いたかったことで考察。

冒頭・サムネイル:

msandersmusicによるPixabayからの画像

このブログを検索

Blog Archive

人気の投稿

QooQ