映画「オペラ座の怪人」から考える山田樹奈のファンが訴えたい事
■場違いな回答
「小柄でハキハキしていて可愛かったです」
バイナリーオプションの指導料名目で詐欺を働き逮捕された山田樹奈の初公判において傍聴したファンが取材で答えたこの言葉。
ファーストインプレッションは何だか馬鹿っぽいというか、場違い感があるというか。
彼女はもうアイドルではないし、ましてやライブ帰りでもない。
裁判で立った犯罪者を見て言うようなことではない。
この男は世間の笑いものである。
いつまで追っかけてるんだ、いつまで夢見ているんだと、
SKEファン、SKEヲタと後ろ指を指されたに違いない。
しかし彼の堂々とした態度にただの盲目とは違う何か信念めいたものを感じたのもまた事実だ。
この報道の記事を引用しようとしたが既に削除されていた。
2021年12月の最新ニュースでは懲役1年6カ月、執行猶予4年の有罪判決が下されたことが報道された。
《相手をホテルに呼び出して…》元SKE48山田樹奈逮捕「年収1000万円」嘘のプロフで塗り固めた元アイドルの末路《懲役1年6カ月、執行猶予4年の有罪判決》 | 文春オンライン (bunshun.jp)
■不変の愛・オペラ座の怪人
異質な愛の形を取り扱った作品に「オペラ座の怪人」がある。
フランスの小説家ガストン・ルル―の傑作である。
オペラ座の怪人は映画や劇に何度も書き下ろされていてそれぞれ作風が少し違う。
私にとって印象深いのは2004年に映画化されたジョエル・シュマッカー監督のミュージカル映画である。
あらすじはこうだ。
オペラ座を知り尽くす怪人「ファントム」は姿を隠しながら、幼きクリスティーヌに助言を与え、歌の指導をする。
醜い顔を仮面で覆い誰にも見せない。
クリスティーヌは成長しスターになるが、若い男と恋に落ちファントムのもとを離れていく。
ファントムは悲しみ、相手の男を殺そうとするがクリスティーヌはファントムにキスをして愛を伝える。
彼女の愛情を受け取ったファントムは彼らを自由にして追うことをやめる。
クリスティーヌは男と結婚する。
年月は経ち、クリスティーヌは死に、彼女の夫が彼女のお墓を見に行くと、そこにバラが備えてあるのを見つける。
ファントムは生き続け、今も変わらぬ愛をささげていたのだった。
簡単だがこれが「オペラ座の怪人(2004)」のあらすじである。
数あるオペラ座の怪人の中でも特にファントムに父性を感じる造りとなっている。
このお話の実らずも変わらぬ愛はアイドルとファンの関係に通じるところがある。
もちろん絶対に実らないなんて夢のないことを言うつもりはない。
しかしそれを承知で応援する覚悟がアイドルファンにはあるのである。
■世間とファンと共犯者
山田樹奈の公判で、傍聴した感想を述べた男性の顔は映っていない。
しかし風袋は伝わる。
傍聴するくらいだからきっと生粋の彼女のファンだったのだろう。
握手会にも足しげく通っていたことは想像するにたやすい。
だから彼女には彼が誰かわかるはずだ。
彼女はおそらく、いや絶対彼のことを覚えているはずだ。
そして彼女が覚えているだろうということも彼はわかっていたはずだ。
だから彼はもしインタビュー映像がテレビ局に使われたら、それが彼女に唯一自分の気持ちを伝えられる機会だと思ったことだろう。
そして彼が選んだ言葉が「可愛い」だったのである。(実際はもう少し話していて使われた部分が上記だけだった可能性はある)
アイドルファンならこの言葉の持つ意味が直感的にわかるはずである。
これはファンからアイドルに送る最大の応援の言葉である。
ここがよかった、こうしてほしい、あれがあれだから等々、要望はたくさんあるだろうが、時間がない時、心が共鳴している時、この言葉一つで言いたいことは全部通じてきた。
事件について彼女はこういう人でいいところもあった、反省してやり直してほしい等々、小難しいことはいくらでも思いつく。
世間の人々が容易に考え付く一般論である。
しかし彼女のことを知らない世間に対してどう説明したって耳を傾けてくれる人はほとんどいない。
だから彼は世間に向けて訴えるのはやめ、大手メディア相手にただ彼女一人に向かって言ったのだ、と推測する。
彼には、彼にしか言えない言葉を選んだ。
アイドル時代に輝いていた山田樹奈、みんなに元気を分け与えていた山田樹奈、自分に生きる目的をくれた山田樹奈。
「可愛い」はSNSでも、握手会でも、アイドルを全肯定する合言葉のようなものである。
これが伝われば言いたいことはすべて伝わる。
言葉では言い表せられない、全力であなたを推していた日々と同じ思いを。
山田樹奈がアイドルになったのは中学生の時である。
純粋に無邪気にがむしゃらに頑張っていた様子が想像できる。
ファンの男性には今もなお彼女の中にあどけなくそして哀れな姿が見えるのかもしれない。
彼が瞬時にこれらすべてのことを計算して言ったかどうかはわからない。
自然に出てきただけかもしれない。
しかしそれでも何らこれらの言い分を曲げることはない。
愛は時に知恵に先行する。
彼女がこのファンの男性に愛情を向けることはないだろう。
彼女には共犯となった交際相手らしき男さえいる。
世間も彼女を簡単に許すことはない。
それでもこのSKE48のファンは、いや顔の映らぬ山田樹奈のファントムは、彼女を遠くから支え、彼女が今でも価値のある存在で、輝いていて、世の中には利害関係なく受け入れてくれる人たちもいるということを、変わらぬ愛をもって訴え続けているのだと思う次第である。
■もう一つの可能性
と言ってみたものの、この事件はもっと複雑かもしれない。
オペラ座の怪人は映画や舞台監督によって多少解釈が違うと先ほど述べた。
その中には、クリスティーヌを執拗に追い詰める狂気的なものもある。
山田樹奈がこのような事件に至った経緯として、一般的な仕事ができなかったという情報もあるようだが、これが実際、彼女が自意識過剰だったためか、芸能界を目指していたためか、それとも高いプライドが許せなくしていたためだったのかはわからない。
ただ、48グループ特有のファンとの距離が近く、売り上げの上でもファンに依存せざるを得ない商法がもたらした弊害だとしたらそこには彼女を追い詰めた本当のファントムがいるのかもしれない。
そしてそれが人の形をしていないことを願う。
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