松島病院の看護師から講義を受けて
■私は潔白か
人工妊娠中絶という言葉が匂わせる私にとってのイメージは「暴力」である。端的に言うと拒絶感のある案件である。胎児の命を奪うことはもとより、本来親と呼ばれるべき人達がそれを望み、社会がそれを容認している現状に、命への無関心が象徴されているようで怖い。
しかし年間の中絶実施件数とその背景、中絶を経験した人達の話を聞き、「暴力」は自分自身の中にもあるのだと気付いた。この世界から目を背けてきた故、この件に無知であったことだ。無責任な男女をゆるせないと正義感ぶることはたやすい。
「年間18万件 中絶の現場―『望まれない妊娠』をどうするか」『Yahoo!ニュース 特集編集部』2017年5月23日(火)<https://news.yahoo.co.jp/feature/613>(2017/11/16)
「暴力は発見する目を持ってみようとしないと見えない」と専門家が講義で語るのを聞いた。「暴力は連鎖する」とも。
私は実両親に育てられ、兄弟もいる。それが普通であると思って生きてきた。学校の友人関係から彼らの家庭環境を知ることはあまりない。優しいお母さん厳しいお母さんと評価し合うことはあっても、彼らも自分とさほど変わらないように見える。
そう言えばアルバイト先で父親を知らないと洩らした青年に出会ったことがあった。母親も小学生の頃に別の男性を追いかけていなくなってしまったらしい。彼に掛ける言葉が見つからなかった。「そんなに重く受け取らないでくれ」と言いながら、彼は無表情でそう打ち明けてくる。そして性行為については縛られたくないと強い自論を吹聴しながら、不貞行為での妊娠についていつもびくびくしていた。
いつ加害者になるかもわからない彼にどんな助言をすべきだったかと今一度後悔する。
そういう家庭環境に生まれた被害者である彼にどんな言葉を掛けるべきだったかと改めて考える。
自分の知り合いにもシングルマザーが増えてきた。DVの話はしないのだが、相手から養育費をもらっていないというのはよく聞く。
■医療の進歩だけでは解決できないもの
「望まない妊娠を予防するケアが児童虐待予防につながっていく」。
避妊方法の進歩により、これはもう女性側に託すしかないのか、と一瞬考えてしまったが、実際に問題に取り組んでいる人達の考えは違う。
システムに頼っているだけでは性と命の価値が一対であること、それが不明瞭になっていく。DV、ストーカーの問題も解決されない。恋愛関係、夫婦関係を度外視にしても人間社会から暴力は消えないだろう。
コミュニケーションが重要だと学んだ。これは当事者である男女二人のものだけを言うのではない。窮地に立たされた彼らを、哀れみ、理解し合い、手助けする私達社会のものである。
参考資料:
まつしま病院(産科・婦人科・小児科)ホームページhttp://www.matsushima-wh.or.jp/
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