埼玉・立てこもり事件|死後30時間で母の蘇生を願った犯人の心理

2022年1月31日月曜日

社会

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ネットの「生き返るわけない」「年金目的」との評価は時期尚早

加熱する報道とネットの憶測

志ある医師が殺された痛まし事件。

生前は患者を救いたいと涙する場面がテレビにも取り上げられたことがあるらしく、失ってはいけない人を失ってしまった焦燥感が関係者や世論から伝わってくる。

一方、犯人は散弾銃を所持、自宅に呼び寄せた医療従事者に発砲して立てこもるなど、世間の注目を集めるとともにその動機に関心が寄せられた。

死亡確認から30時間、立てこもり男「母が生き返るかもしれないので心臓マッサージを」 (msn.com)

報道で少しずつ犯人の動機が明らかにされる中、Twitterでは死後30時間経っているところに医者に蘇生を要求する犯人が理解しがたいという評価を目にした。

そして犯人は知性を持たない頭のおかしな人という人物像に落とし込まれていく。

また、年金が欲しかったため母親を生きながらえさせる必要があったのではという根も葉もない情報まで創作された。

確かに親の年金にすがる息子娘や不正受給をもくろむ事件は時折、報道される。

しかし現段階で、今回の事件と年金が絡む事件を結び付けるのはさすがに時期尚早と言わざるを得ない。

マスメディアにセンセーショナルな記事とタイトルで人々を扇動する欠陥があるとすれば、Twitterやその他のネットを扱うインフルエンサーには、個性的な見方で価値の先駆者または予言者になろうとする欲望がある。

マスメディアには不信感を抱くそれ相応の理由があり、インフルエンサーには意見を対立せざるを得ない軽率さがあるにせよ、それらを解釈する責任と拡散するか否かの自制は私たちに委ねられているわけだから一層慎重になるべきだと思う。

情報を整理する

現時点で出されている情報を整理してみたい。

犯人は医療関係者を呼び寄せた時には、すでに彼らを殺そうと考えていた。

とすると、犯人は本当に生き返せると思って言ったわけではなく医者を責め立てるための口実作りに頼んだとも考えられる。

銃の引き金を引くほどの激情を呼び起こす衝動が欲しかったのかもしれない。

つまり「生き返らせろ」という無理難題を突き付け(犯人は蘇生が不可能であることを知っていた)、「できないんだな、じゃあ殺す」と自分の凶暴性を正当化しようとしたということである。

また母親が死んだことで「この先いいことがない」、「自殺しようと思った」と言っていることが本当であれば、母親を蘇生させる動機が「年金のため」とは考えにくい。


母親の死に傷心した犯人は自分の不幸を聞いてくれる友人を持っていなかった。

だから一人でその苦しみを解消できず、やがてそれが怒りの感情に変わっていったと私は見ている。

医療関係者には母親への対応で日ごろから不満を募らせていたとも聞く。

犯人の動機について現在の情報から分かることは、犯人が自殺しようとし、それに医師を巻き込もうとしたということだけだ。

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