能ある鷹は爪を隠す?
韓国ドラマ「ミセン」のワンシーン
最近、母が韓国ドラマ"ミセン"を見ている。
私もパソコンをカチカチ打ちながらチラチラと見ていた。
でも見入ってしまうほど面白いところもある。
内容としては新入社員の上司との衝突あるあるを集めた感じだが、上下関係が厳しく学歴社会でもある韓国の世相をよく表していると推察できるし、日本でもあるよなあと自分の経験と照らし合わせてしみじみできる作品でもある。
ドラマの中でこんなシーンがあった。
主人公チャン・グレの同期であるハン・ソンニュルという男性が上司から、ソシオパスだのサイコパスだの𠮟りつけられるのだ。
このドラマは基本、パワハラ、セクハラ、モラハラをふんだんに盛り込みながら話が進んでいくのだが、そんなことを言われたハン君は非常に傷ついた様子を見せる。
開いた口が塞がらないといった感じでうろたえる。
その上司はいかにも意地悪な顔つきで役者としては上手いという他ないが、実際にこんな人がいたら嫌ですと言わざるを得ない。
ソシオパスは日本では反社会性パーソナリティ障害と呼ばれる。
サイコパスはサイコパスの方が使われているが、精神病質者というらしい。
どちらも正式な病名として使われるからそう罵った上司はしたり顔である。
何とも自信満々に決めつけるのである。
障害を悪口に使う人は意外に多い
こういうことも恐らく実際にあるかもしれない。
そう言われた人もいるかもしれない。
いや、いるだろう。
サイコパス・ソシオパス以外にも、こういった類の罵倒は会社や学校、ネットで使われているようである。
発達障害、アスペルガー症候群、統合失調症などがその最たるものだろう。
そしてそれらの略語もある。
シンプルな悪口で言えば、馬鹿とか阿呆とか間抜けとかあったが、自分に不都合なことがあるとその原因らしきものを学名で言うようになるのか。
人間とは不思議なものである。
無論、それらの病名は人を罵倒したり傷つけたりするためにつけられたのではない。
人間を理解し、本人や周囲の人がその要因による苦しみが少しでも軽くなる足がかりとなるために研究されてきたものだ。
そう考えると、火も刃物も言葉さえも、人間はなんでも武器にしてしまうのだなあと憂慮せずにはいられない。
専門性のある人の言動
医者がこの人は発達障害があると診断したら、とりわけ慎重に伝えるだろう。
支援する人たちは発達障害の人でもそれを声に出して言うほどの価値はないと考えている。
言葉が伝わりにくければ伝わる工夫を、集中力が続かなければ何か他の物を、言葉遣いが悪くても柔軟に対応する。
発達障害というくくりではなく、その人が実際に持つ特性、実際に表現する行動に合わせて言葉を選んだり、適切な介助をしたり、方法をとったりする。
ともすれば、ミセンに出てきたあの上司のように、ソシオパス・サイコパスの特徴を表面的に知っているからと言ってあたかもその人の二つ名のようにレッテル貼りをしてはいけない。
これはラベリングと言って専門家が避けなければならない技術の一つである。
もし病名・学名を出すのであればそちらの技術のことも倣ってほしいものである。
ドラマに出てきたあの上司の方がお医者さんに診てもらった方がいい状態な気がする。
自分の責任を相手に擦り付けたり、人の間違った印象を知れっと言い広めたり。
原因ははっきりと解明されたわけではないが、競争社会やストレス社会では人はそういう状態に陥りやすいと感じる。
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