紅白変わった?
2021年の第72回NHK紅白歌合戦を見て思った。
以前より面白い?
以前より映し方がいい?
以前より歌に入り込める?
音楽番組のメリット・デメリット
私がこれまで紅白歌合戦にあまり興味を持てなかったのは、曲があまり尊重されていない気がしたから。
歌番組のいいところは、自分の好きなアーティストやグループが外の世界で活躍する興奮があるからではないだろうか。
つまり、普通だったら好きな歌手の歌を、歌手のライブで聴き、CDで聴き、YouTubeで聴けば満足できるものの、そこには自分かファンしかいない。
たまに興味を持ってきてくれる人やアンチもいるけれど、、、。
しかし、歌番組はファンだけでない広い世代、広い価値観を持った世界へと聴かせる開放感がある。
ファン目線ではない人の意見も気になるし、そういう人が感動してくれたらなおさら嬉しい。
やっぱり誰が聴いてもいい歌なんだと価値観を新たにすることができる。
歌番組のもう一つのいいところは、自分の注目していなかった歌手や曲を知ることができることでもある。
ライブもCDもYouTubeも自発的であって自分の選択肢でしか動かない。
自分主導とはいいことではあるけれど、聞くものが固定してしまうから感性に偏りが出てしまうことがある。
好きなものばかり食べていると飽きてくる。
飽きるのはその食べ物、そのアーティストが悪いのではなく、自分の舌が、自分の感性が同じ刺激によって鈍ってくるからだ。
ラジオでもそうだが、音楽番組で自分の好きなアーティスト以外を見ることで、自分の感性を豊かにし、好きな曲をもっと好きになれるし、新しく好きな曲やアーティストを見つけることができる。
ただ紅白歌合戦は進行がせわしないせいかアーティストがないがしろにされているような気がしてならなかった。
ぎゅうぎゅう詰めのスケジュールだから仕方がないと言えば仕方がない。
でもそんな仕方がないことまでして番組をやる意味があるのかとも思えるのだ。
ミュージックステーションは生放送ではあるが、そこまで急かされているようにも見えない。
司会のタモリさんが落ち着いた感じで笑いも交え、アーティストの内面を知れるような軽いやり取りもある。
そこで今回の紅白が少し良くなったのは司会のおかげかなとも思ったのだ。
確証があるわけではない。
司会のせい?司会のおかげ?
今回の司会は、大泉洋さんと川口春奈さん、そして和久田真由子アナウンサーであった。
5年さかのぼってみると以下のとおりである。
第71回 総合司会:内村光良・桑子真帆 紅組:二階堂ふみ 白組:大泉洋
第70回 総合司会:内村光良・和久田麻由子 紅組:綾瀬はるか 白組:櫻井翔
第69回 総合司会:内村光良・桑子真帆 紅組:広瀬すず 白組:櫻井翔
第68回 総合司会:内村光良・桑子真帆 紅組:有村架純 白組:二宮和也
第67回 総合司会:武田真一 紅組司会:有村架純 白組司会:相葉雅紀
それより前には嵐のメンバー全員が出たり、黒柳徹子さんや井ノ原快彦(V6)、中居正広(SMAP)、笑福亭鶴瓶、
女優では大河ドラマや朝ドラで縁のあった吉高由里子さん、堀北真希さん、井上真央さん、松下奈緒さん、仲間由紀恵さんが勤めている。
皆、国民的な認知度があってなおかつ司会の経験があったり、視聴者が納得できるような人選である。
紅白の司会はNHKの威信にかけた人選のような気迫さえ感じられ、さながら総理大臣の選出くらい"勝てる人"を模索しているような力量が感じられる。
2004年の第55回までは司会はもっぱらNHKのアナウンサーが担っていたようだ。
だから司会者が単なる実力主義にとどまらず認知度、好感度、パフォーマンスに重きを置いてきたところは何だか最近の米国の大統領選挙に似ている感じがする。
そういう潮流なのだろうか。
ただこれだけ大物を起用しても、いざ番組が始まってみると、ちょっと空回りしているような、ジョークを言っても乾いた笑いのような、司会者らがかみ合っていないような、妙なぎこちなさが発生していたように思う。
紅白歌合戦は、出場者にとって他の音楽番組とは比べ物にならないプレッシャーがあると聞いたことがあるが、司会者にとってもそうなのかもしれないし、観客も緊張しているかもしれない。
そう言った空気が画面を通して伝わってきてもおかしくはない。
ただ今回の紅白は視界が空回るようなところがあまりなかったように思えた。
巻いてるな、急いでるな、と感じるところはあったけれども、それでも人間的で温かみが感じられたような気がしたのだ。
大泉洋さんが自虐を許せる人、他の司会者二人からのツッコみを"おいしい"と思えるキャラだったせいもあるかもしれない。
それも大きいだろう。
また、大泉洋さんの個人的な交友関係がアーティストたちとの自然な掛け合いを助けたところもあった。
だが、私なりにもう少し平等に今までの司会者との違いを精査してみるなら、それは準備期間の密度にあったのではないかと考える。
これまでの司会者は大物の女優俳優、アイドルであった。
彼らがしっかりと打ち合わせしたり、練習したりする時間が取れたかと考えると難しいと思う。
スケジュールを合わせてリハーサルができたことも少ないのではないか。
その分台本をしっかり作るのだろうが、それでも掛け合いとなると特に淡々とした感じが出てしまうのは否めないだろう。
それに比べ、決して大物ではないとは言わないが、大泉洋さんと川口春奈さんは今までよりは時間が取れそうな気もするし、スタッフが口を出せそうな気がする。
そうした司会を含めた現場のコミュニケーションが今回生かされた結果なのではないかと少し考えたのだ。
司会を3人に縮小したことにより、他の司会者に気を遣う間がなくなりコミュニケーションもコンパクトになった印象も受ける。
どんなに有能な人でも、人と人が協力しなければならない状況ではその関係性を一から育まない限り結果を出すのは難しい。
演出がかっこよかった
コロナ禍で会場を分散させることにより、そのアーティストだけの特別ステージを作ることができた。
そのため生放送にもかかわらずまるでMVのような高いクオリティーの演出になっていた。
そこは面白かった。
紅白の音響
紅白に入り込めない理由の一つは、音圧が軽い気がするところにあった。
これは私の感覚なので実際のところわからない。
だが、歌も音もなんだか分散して届かないように感じていた。
どんなにアーティストたちが熱唱しても、ぐっと来ない。
それは音響のせいだと思っていた。
音痩せしている?
アーティストの存在感が小さく感じる。
そこが聴いていてとても残念に思えたし不思議だった。
しかし、今回はそこまで気にならなかった。
とはいっても他の音楽番組に比べるとまだ簡素な感じはするが。
もしかしたらNHKの音響は性能が良くて、解像度がよく、しかも正直なのかもしれない。
ということで今回の紅白は今までの紅白の不満を解消してくれるものだったと思う。
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