イソップ童話「アリとキリギリス」のアナザーストーリー
ー君がいたから頑張れたー
アリは働き者だ。
朝から晩までせかせかと動き回る。
食料を集めて地底の城に持ち帰り、十分蓄えて冬を越す。
キリギリスは道楽者と語られる。
アリを尻目に秋には音楽を奏で、浮ついた愛ばかりを歌っている。
そして冬になれば死骸となって地上の肥やしになるのだ。
「だけれどキリギリスは知っていたのです。
己には音楽しかないことを。
キリギリスは知っていたのです。
己の一生の儚さを。
『巨万の富も一握りの糧もみな等しく朽ちていく。
愛を歌え、精一杯、命尽きるまで』。
それが地中から顔を出した時、キリギリスが仰向けのセミから教えられた魂だった、と伝え聞いております」。
そう話してくれたのはキリギリスのお孫さんのキリギリス。
いま、2世代に渡って「アリの過酷な労働問題」についての研究論文を執筆しているところだそうだ。
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