大東亜の何がいけないのか
陸上自衛隊の一連隊が公式に運営するX(旧ツイッター)が不適切な言葉を使ったとして炎上しました。
以下がその投稿内容です。
#32連隊 の隊員が、大東亜戦争最大の激戦地硫黄島において開催された日米硫黄島戦没者合同慰霊追悼顕彰式に旗衛隊として参加しました。
慎んで祖国のために尊い命をささげた
日米双方の英霊のご冥福をお祈りします。
陸上自衛隊の第32普通科連隊、公式Xで「大東亜戦争」と表現:朝日新聞デジタル (asahi.com)
ですから一般の感覚では、戦争の美化、戦争の正当化としてみなされます。
言葉の意味と自分が使用した意図に乖離がある場合は、「大東亜戦争」というようにかぎかっこで囲むなどの配慮がありますが、本件ではそれもありません。
この呼び方を肯定する意見として、太平洋戦争よりも地理的な範囲を正確に表しているというものがありますが、それはちょっと不正確もしくは不誠実で論点をはぐらかした回答です。
地理がどうとかではなく、この”大”がよろしくない。
もし東アジアならまだわかりますが、わざわざ大をつける必要はありません。
大という文字に例えば”広範囲”という意味合いを持たせるという意見もあるようですが、それも取り繕ってるにすぎません。
この大という文字は、大東亜共栄圏からきているのは少し勉強すればわかることです。
言葉というのは意味以上に意図、つまりルーツが肝心。
それを”広範囲”に後から意味を変えるのは卑怯で情けない考え方だと思います。
それなら大東亜の正当性を堂々と訴えた方がまだましです。
また、戦争の名称から正確な地理を表現する試み自体、無意味なことです。
全てを網羅できなくとも拠点となっただいたいの地域が分かればそれでいいのです。
この地理に関する名称としてはアジア・太平洋戦争という呼び名で一応の解決はしています。
大東亜戦争、大東亜共栄圏は明らかに大日本帝国主導を意味し、しかもそれを正当化・誇示する意図があるため忌避されているのです。
もし大東亜共栄圏にアジア諸国の独立に寄与する一面があったと主張するのであれば、大東亜などと日本を前面に出すのではなく、独立した各国の努力・勇気・犠牲を尊んだ名前にすべきです。
間違っても「日本のおかげでお前たちは独立できたんだ」などと偉そうな名前にすべきではありません。
なぜ自衛隊員は大東亜を使ったのか
大東亜戦争という呼び名は、敗戦後GHQにより禁止されました。
アメリカがだめだよ、と言ったんですね。
それが今回、日米合同慰霊追悼顕彰式に使われたわけです。
アメリカ絡みのイベントで使ってアメリカが苦言を呈してこなければ、「大東亜」の使用が”許された”という印象を世間に与えられると考えたのかもしれません。
恐らく大東亜共栄圏、大東亜戦争に肯定的な意見を持った人がこれを画策したと推察されます。
そして大東亜を使ったのはそれを支持する人たちから注目され応援されるためだと考えられます。
投稿の中で英霊という言葉も使っています。
これは一つの宗教ですので批判するつもりはありません。
戦死した人たち、殉職した人たちを弔うのは悪いことであるわけがありません。
しかし、それをイベントで活躍する自分たちに注目を集めるような使い方をしているところが気になります。
まるで著名人がなくなった際に、彼とはこんなエピソードがあったと投稿する売名行為のようにも見えるのです。
亡くなった人たちにもし今も人格があるとしたら、そのように利用されてうれしいのかなと思います。
たとえ国が守られ、戦争の抑止力になったとしても亡くなった人にとっては失った人生がすべてなのです。
私も彼らのおかげで今の平和な日本があると思うことはあります。
そして彼らの死を無駄にしないためにも戦争はせず、社会のために役に立つ人間になろうと思うこともあります。
しかし、彼らの死のためになる理屈を添えることはできても、彼らの命を償うことは決してできないと私は思うのです。
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