陰謀論を追う前に基本的なことを抑える
問題のある人物・団体との接触は政治家の仕事でしばしば起こる
2022年7月8日、安倍晋三元総理が凶弾に倒れました。
犯人の供述から、犯人がかつて統一教会と呼ばれ、今は世界平和統一家庭連合と称される宗教団体に恨みがあり、この宗教とのつながりが強いと思われる安倍氏を狙ったということが分かりました。
また、その後の報道で安倍氏の祖父である岸信介元総理が統一教会を支援したということからその恨みを安倍氏に向けたこともわかってきました。
一部ネットでは安倍氏と統一教会の癒着がまことしやかにささやかれています。
安倍氏と統一教会に強い関係があるとまるで犯人と同じ思考の人もいます。
実際のところ真相はわかりません。
わかりませんが、一つだけ覚えておいてほしいことは、政治家は自分が信じる信じないは別として宗教団体から招待を受けたらなにかしらの反応をしなければならないということです。
しなければならないというところに法的な義務の意味はありません。
礼儀の問題です。
宗教団体の招待を無視することは失礼なことであり、差別的なことと捉えられる恐れもあります。
政治家はそこが会社だろうが学校だろうが宗教だろうが、招かれた行事には出席する、出席できなければ祝電なりそれ相応のメッセージなりを送るのが普通です。
そこに有権者ある限り政治家は無下にできません。
特に与党、野党第一党のような有権者の層が広い党はその傾向にあります。
それが政治家の仕事なのです。
確かに統一教会の教義は一般社会から見たら異質です。
合同結婚式や霊感商法、昔のイメージ通り実際に被害を受けた人も大勢います。
私は統一教会を庇うつもりはありません。
ただ、ここは線引きが非常に難しいところなのです。
オウム真理教の後進の団体やイスラム過激派などに呼ばれたらさすがに断るでしょう。
明らかに反社とわかる団体の申し出も断ります。
今回、安倍氏との関わりを報じられた世界平和統一家庭連合の代表の説明によりますと、安倍氏からメッセージをもらったことはあるが、会員として登録されたことも顧問になったこともないということです。
安倍元首相銃撃 宗教団体が会見 “容疑者の母親が信者” | NHK | 安倍元首相 銃撃
これを鵜呑みにできない方もいらっしゃると思います。
公にされていない"陰謀"を追っているのですから当然のことです。
ただ陰謀を暴くためには、世の中の常識的なこと、基本的なことは押さえておかなければなりません。
先ほど申し上げた「政治家は会社だろうが学校だろうが宗教だろうが、招かれたものには出席する」というところです。(今回の場合はメッセージビデオでしたが)
私が思うに、統一教会と安倍氏の関係は一宗教団体と一政治家の関係の域を出ないものと見ています。
この問題は、政治家が反社の人と並んで写真に写ったことがスキャンダラスなネタにされたものに似ていると受け止めています。
つまり、政治家は何百何千という人と会います。
写真を一緒にとってと言われることも沢山あります。
その中にたまたま反社の人がいて癒着を疑われたという類のものということです。
安倍氏もこれまでに他に様々な団体を訪問したりメッセージを送ってきたでしょう。
その中に統一教会があっただけなのかもしれません。
沢山かかわってきた団体の中に社会的に批判を受ける宗教団体があったということです。
私は現在白熱している統一教会と政治家の関係を今までみんな知らなかったかのように糾弾しているのがとても不思議です。
隠していたというより聞かれなかったから答えなかった。
統一教会に限らず、様々な宗教との関わりがあるのは普通のことです。
なぜイメージの悪い統一教会とあえて関係を持ったのか、それが安倍氏の心の広さだったのか、政治的戦略があったのかまではわかりません。
安倍氏は北朝鮮の拉致被害者救済を推進していましたから、韓国・北朝鮮とのかかわりのある宗教をないがしろにすることによってさらなる関係悪化を恐れたのかもしれません。
個人的には人とのつながりを大事にしただけのように思えます。
彼の政治スタンスに鑑みると、敵対したり排除するよりも積極的にかかわることによって相手を軟化させる手法をとったとしても不思議ではないからです。
それも政治家の仕事だと考えるとわかりやすいのではないでしょうか。
もとより、この件はインターネットで調べればすぐに出てくることであって、誰かが暴露したり、潜入捜査したりして表に出たものではありません。
積極的に発信していないだけで、安倍氏も自民党も隠していたわけではないのです。
陰謀論に数えるにはいささかお手軽すぎるネタではないでしょうか。
(インターネットだけで陰謀を暴けるほど世の中が平和であればよかったのですが・・・)
そういうわけで政治家はその仕事の性質上、有権者を無下にできないということだけは繰り返し申し上げて終わりにします。
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