「進学しないと決めた」←いや進学させてやれ
新規開拓に貢献したければ非ファンの視点に立ってみるべし
SKE48が新公演の宣伝のために名古屋駅やその周辺の駅に大きなポスターを張り出しました。
“ご満足いただけなければ、全額返金”。SKE48 チームS、グループ初の「全額返金保証公演」の実施を発表 – THE FIRST TIMES
メンバーがダンスの練習をしている風景を白黒の画像で表現し、そのメンバーやその場面にあったキャッチコピーがおかれています。
コピーは小比類巻洋太氏が担当されたようです。
#SKE48 オリジナル新公演 #愛を君に愛を僕に のプロモーションで、コピーを担当させていただきました。華やかな舞台の裏にあるリアルな感情とはどんなものか?アイドルの皆さんを憑依させる勢いで、想像をめぐらせました。誰かの気持ちを代弁する仕事の意義と責任、肝に銘じていたいです。 https://t.co/96EX70Znxr
— 小比類巻 洋太|yota kohiruimaki (@k0hiruimaki) June 1, 2022
私がこの広告を見たのはネット上でして、一応私もファンの部類でしたのでメンバーを格好よく映し出しているなという印象を受けました。
たぶんカラフルでポップな普通のアイドル風の写真だったら一般の人は素通りするのではないかと。
環境とか社会に対して問題提起しているような重い雰囲気には普段アイドルに触れない人からも注目を受けたかもしれません。
そして特にSKE48の生粋のファンの方々からは絶賛の嵐だったと感じます。
ただ、私のSNSのアカウントはSKE48専用ではありませんし、私も様々な方法で情報収集するのがある意味仕事ですので、ファンでない方の反応に遭遇することもありました。
一番印象的だったのが、おそらく松本慈子さんを主体とする広告で、彼女が練習中涙している画像に「いずれ訪れる卒業を、私は待たない。ここで化けずに終われない」というものに対する感想です。
アイドル業界というのは少女たちの涙や嗚咽さえ売り物にする残酷な商売で嫌悪感すら覚える
文言通りではありませんが、主旨はだいたいこんなのことを言っていました。
ファンはアイドルの目標を応援し、アイドルの性格や背景を知っていますから彼女たちの涙を尊い物だと捉えるはずです。
しかしファンでない人にとっては、広告を見ればまず商業的な臭いを感じ取るでしょうし、涙に対して同情する理由を持ち合わせていません。
「泣くくらいならやるな。弱音を吐くならやめてしまえ」と感じたとしても不思議なことではないのです。
ファンと非ファンの温度差から広告での表現の仕方の難しさを感じ取るとともに、この広告は恐らく対外的なものではなくファンとメンバー用なのだと感じた次第です。
確かに劇場の外に貼ってはいますが、それは必ずしも新規を取り込むためではなく、新しいことに挑戦していると既存のファンの士気を高めるよう機能しているということです。
進学・進路についての価値観
青海ひな乃さんを主体とするポスターには「進学しないことを選んだ。この道を正解にすると、決めた。」と書かれています。
私の知っている青海さんは「空港のお土産屋さんになろうと思った。お母さんに相談したらもうちょっと考えなさいって言われたのでアイドルになった」だったので、これは新しい視点です。
彼女がアイドルか進学かを迷っていたとは思っていませんでした。
あまり公にしない内に秘めた思いなどもあるのでしょうからおかしなことではありません。
ただ、ここにも少し違和感を覚えるところがあります。
ファン向きに考えれば、「青海さん、アイドルになってくれてありがとう!」と絶賛するところです。
彼女のSKE48への貢献と活躍を見ればほとんどの人がそう考えるでしょう。
しかし通りすがりの人が見たらどう思うか。
先ず、アイドルに高卒は珍しくありません。
中卒の場合もあります。(青海ひな乃さんが中卒に思われる確率は低いですが)
同じ愛知県出身の藤井総太氏は名古屋大学教育学部付属高校でした。
彼は3年生の1月に退学したのです。
あと2か月、もう卒業は決まっているだろうとも思えるタイミングでしたが、そこからは将棋の1戦に賭ける思いが伝わってきました。
将来、高偏差値の大学に行く予定だった、もしくは高偏差値の大学だったがアイドルを続けるために辞めたのなら多少インパクトはあるかもしれません。
現在はアイドルが大学と両立できることの方がセールスポイントになります。
アドバンテージを持たせるならむしろ大学生か、専門性のある職業である必要があるでしょう。
アイドルのために進学することをやめたと聞いて一般人が感じることは「もったいない」とか「将来的にはやめない方がいいな」とか「アイドルと大学を両立している人はたくさんいるよ」だと思います。
もちろん青海ひな乃さんが強い思いをもってアイドル業に挑戦しているというのはファンが知っていることですし、事実だと思います。
しかし一般人への広告の効果として考えた時にこれが有効なのかと客観的に考えてみると、もしかすると逆にものすごく彼女の名誉を傷つけているのではないのかとも思ってしまいます。
またSKE48やその事務所である株式会社ゼストを貶めている内容とも捉えられます。
「SKE48って大学行かせてあげないの?他のところは応援してくれてるのに」
「SKE48はアイドルやめた後のことは考えさせないのかな?使い捨てかな?」
アイドルが大学生、大卒をアピールする昨今において、それを応援する姿勢がないのは低レベル、低モラルな会社と捉えられます。
これはセカンドキャリアを支援するアイドル業界でもその道の最先端を目指すSKE48・株式会社ゼストのセールスポイントと真逆のものです。
また誰しもが知っているくらい有名でなければ、アイドルは社会的に地位が低い職業と思われています。
それを恥ずかしげもなく宣言するところに世間の価値観とのズレを感じてしまうのです。
もっとも青海ひな乃さんは期としてはまだ若いですが、今回、新公演のセンターに選ばれています。
ですからこれは彼女がなるべく多くのSKE48ファンにこの大抜擢を納得してもらえるよう、それに見合った犠牲を彼女が払っていることを示したかったという意図があったのかもしれません。
そうなると広告会社はクライアントであるSKE48運営の要望を聞いただけということになります。
恋愛禁止ならぬ進学禁止?
もう一つ大学を用いたキャッチコピーがあります。
「大学に通う友達が、羨ましかった。次は、私が羨ましがられる番」
この文言はメンバーが一列に並び、肩を組んでラインダンスのような練習をしている画像に載っています。
真剣な面持ちで、マスクしてるのに密着しているという、ほど良いツッコみどころがある画像ですが、またもや大学について言及しているということで、どんだけ大学にコンプレックスあるんだよ、と。
これは一般人の反応ではなく私自身の感覚です。
そんなに彼女たちが大学に未練があるように見えるだろうか。
小学生や中学生のころにアイドルになったなら、もしくは親の期待に応えるためアイドルをやっているなら大学生の年頃になってそういう気持ちが芽生えるかもしれません。
また、人はない物ねだりするものですから、自分がアイドルになっていなかったらと考えることもあるでしょう。
とファンは考えます。
こちらのポスターは国際センター駅に掲載されたそうです。
学生も利用する駅なので若者を狙ったのでしょうか。
これを大学生が見たらどう思うでしょうか。
自分のことを羨ましく思っているアイドルがいる。
中には親近感を持つ人もいるかもしれませんが、「大学に行きたければ行けばいいんじゃないだろうか」と非ファン目線に戻って考えてみます。
大学生は大学生で忙しいです。
いつも遊んでいるわけではありません。
毎晩徹夜でレポートを書いています。
むしろ彼らにとってはアイドルの方が遊んでいるように見えるかもしれません。
「次は私が羨ましがられる番」ときたら、
「いやいや、もともと羨ましいと思っているから」と彼らは答えるかもしれません。
そして大学生をなめないでほしいなぁと思われたら逆効果です。
それに先ほども言ったように、現在大学生の中で主流で人気のあるジャニーズや坂道グループまた、K-popアイドル達の中には大学と両立しながら働いている人も沢山います。
SKE48だけがアイドルではありません。
大学生たちはスマホ・ネットの使い手です。
彼らも十分アイドルのことをわかっています。
そうなると大学生たちは共感よりも自分の推しと比べて「ちょっと甘いんじゃないかなぁ」とこれまたSKE48メンバーが恥を受けるコピーになってしまう恐れがあります。
また、実際にはSKE48にも大学に通っているメンバーは何人もいるわけで、仮にこのキャッチコピーに感心してファンになったとしても、普通に大学行ってた、となれば裏切られた気持ちになります。
大学に通っていることを秘密にするのがSKE48の習わしでしょうか?
恋愛禁止ならぬ進学禁止のような空気が無きにしも非ずです。
あと、余談ですが若者向けなら特に「羨ましい」はひらがなの方がいい気がします。
大学生の場合、読書はこれからの人もいるので読めない人もいますから。
リサーチの大切さと興味深さ
SKE48運営と広告業者がどのようなリサーチ方法を取っているかはわかりません。
彼らもプロですので情報収集には余念がないはずです。
Twitterの反応を見るにもまさかハッシュタグを検索しただけで終わらせたりはしないでしょう。
ハッシュタグはファンがつけるもので、見込み客や新規開拓にとっては無用の長物だからです。
手っ取り早いのは街頭でアンケートを取ることです。
大手メーカーのCM制作会社が使っている手法です。
しかもSKE48運営と広告作成会社がそれぞれ単独で調査する。
そうすれば広告の効果を客観的に評価することができます。
またファンとしてグループの新規獲得に貢献したいと思った場合は、作られた広告やメンバーの発信についてどう思うか率直な意見を友達や家族に聞いてみるのも効果的でしょう。
もちろん極力忖度されないような言い方で質問することが重要です。
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