大味な対策のデメリット
2022年11月25日のニュースで、吉村大阪知事が物価高対策として、所得制限なしに子ども一人に米10キロ配るとの報道を見かけました。
「子ども1人に米10キロ配る」大阪の物価高騰対策 吉村知事が方針示す 所得制限なし | MBSニュース
大阪維新は少々奇抜な対策をとるという印象を持っている方も多いかと思います。
対策にはメリットデメリットの両面が出るのは致し方ありません。
ただ、大規模で何々世帯と一括りにされたものには目的と実際の齟齬が見られるのはままあることです。
そのために福祉サービスは多種多様な問題にきめ細かく対応できるように枝分かれし、人手を必要としているわけです。
今回の対策の良し悪しは別として、どのような問題があるか予想してみましょう。
様々な理由でお米の支給が必要ない人
乳児はお米が食べられない
生まれたばかりの乳児はまだお米を食べません。
親御さんが食べることになるでしょう。
妊婦さんも支援の対象ということですから、親御さんの食事になることは念頭に置かれているのだと思いますが、読売テレビの取材で聴かれた大阪府の子育て世代からは、0歳児を育てる人からおむつなどの消耗品の方が助かるとの意見があったようです。
大阪府 子育て世帯に1人米10キロ配布へ|読売テレビニュース (ytv.co.jp)
米アレルギーの人
米アレルギーの人は全国で40万人いるそうです。
人口のの0.33%。
正確な数字ではありませんが、支援対象である大阪の18歳以下の人口に約140万人に当てはめると、割合的に4620人が米アレルギーのため不適用になる恐れがあります。
また、妊婦さんと親御さんの数も入れたらもっとその数は増します。
米の好み
この対策にもろ手を挙げて賛成している人はあまり関心のないことかもしれませんが、偏にお米といっても様々な種類があります。
粒の大きさ、水の含み具合、炊きあがりの固さ、弾力、ツヤなど結構差があります。
支給されるのだから贅沢言うなと言う人もいるかもしれません。
しかし平成の米騒動で、お米の供給が減ってタイ米が安く手に入った時代でも、タイ米を食べられない人は沢山いました。
国産のお米は、タイ米ほどの違いはないと思われるかもしれませんが、人によってはそれくらい違うと感じる人もいます。
好みのお米でないと食べられない人がいるということです。
私は好みのお米を選ぶことを贅沢だとは思いません。
本当にそれしかないのでしたら我慢して食べる必要もあるかと思いますが、今はお米が不足しているわけではありません。
農家の方々は、日々鍛錬をもってお米を育てています。
改良を重ね、おいしいお米を作ることに生涯をかけているのです。
そのような努力の結晶の結果出来上がったお米が、おいしいという理由で選ばれることは農家の方への敬意であり本当に食べ物を大切にしているということです。
むしろ人の好みをないがしろにして、何でもいいから送りつけるという方がお米を粗末にしていますし、飽食の時代だと感じます。
お米を送ってもらっている人
実家が農家の人、親せきが農家の人は、お米の自給率100%かもしれません。
また、自分がおいしいと思って贔屓にしている農家からお米を買っている人もいます。
そのような人は、行政からお米を送ってもらうことに困惑するかもしれません。
パン派の人、外食の人
お米が嫌いな人もいます。
パンを主食とする人もいます。
家事をしない人もいます。
子どもも含め外食で済ませることが多い人もいます。
これにも贅沢言うなという声が聞こえてきそうですが、先ほども申し上げたように自分で選んでおいしく食べることが、食物への何よりの感謝であるという考え方もあります。
そして、本当に世帯ごと、人それぞれに生活スタイルは様々です。
この件に関して、家事をしろとか、外食ばかりするなという批判はかなりおせっかいなことだと思います。
もしそこに問題があってもこの件で語るべきではありません。
それでは、人々の生活を支援するのではなく、今回の対策を正当化するために人々の生活を変えるといった本末転倒の結果になってしまいます。
物価高で高騰する送料
お米10キロは送料にすると、場所にもよりますが1000~2500円程度。
金券やお米券の方が効率がいいという意見が出るのも納得です。
今回の物価高対策が発案された日本の物価高騰の原因の一つは、原油・ガソリン代の高騰です。
ともすると運送に頼るであろうこの物価高対策が、送料の面で物価高の原因そのものと正面衝突するイメージが出来上がるのです。
この物価高で送料を改定した大手運送業者はまだないようですが、ガソリン代は実際高騰しています。
ガソリン1リットル160円台と表示されていても、政府の補助金がなければ本当は200円を超える時期もあったようです。(運送には経由の方が使われている割合が多いかもしれませんが、補助内容は同じです)
燃料油価格激変緩和補助金|経済産業省 資源エネルギー庁 (nenryo-gekihenkanwa.jp)
運送業者の需要を高める対策は、端的に言うとこの補助金の必要性を高めることであり、本当は80億円以上かかることになります。
ただ、そうは言ってもこの補助金は補助に対して経済活性化の方がメリットが大きい、もしくは経済を停滞させない目的でなされていると思われますので、これが単なる税金の無駄遣いになると言いたいわけではありません。
癒着
JA、米農家、運送業者、大阪府知事がどのような会社とかかわっていくのか、これから注視されるでしょう。
行政が働く場合、必ずどこかの会社に頼まなければいけないわけですから、何でもかんでも癒着と人聞きの悪い言い方を使いたくはありません。
議員、政治団体には後援会があります。
私が懸念しているのは、大阪府知事および大阪維新は自分の利益をほのめかす営業マンの甘い誘惑に弱いのではないかというものです。
時短協力金業務を任せたパソナにしろ、イソジンの製造元である塩野義製薬にせよ、それが癒着か否か以前に、もう少し使う側、使われる側の意思の疎通ができなかったのかということです。
大阪維新の政策というより、まるで営業マンが持ち掛けた話をそのまま府民に説明しているようにしか聞こえず、具体性や信憑性がありません。
必要のないお米の行きつく先
様々な理由でお米が食べられない理由を申し上げましたが、そのお米の行きつく先は廃棄か、転売か。
冒頭で申し上げたようにどのような対策にもデメリットはあります。
そしてよい対策というのはそのデメリットを補う方法を備えているものです。
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