松本人志氏の訴訟終結における田代弁護士の手腕

2024年11月8日金曜日

芸能レビュー

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初めから負け戦と覚悟していた弁護士らの舵取り

松本人志氏の裁判への理解

最初に理解しておかなければいけないのは、この裁判、訴えているのは松本側であるということです。

文春を通して被害を告白したのが女性側であるため、女性側が起こした裁判で松本は弁護士を用いて無罪を主張していると誤解している方もいるため念のため申し上げておきます。

正しくは、文春が松本人志氏の性加害を記事にしたことにより、松本氏が名誉棄損だとして文春を訴えたということです。

もう一つ押さえておかなければいけないのが、文春は松本の性加害が事実であろうとなかろうと負けることはないということです。

文春の取材の仕方が適切であれば、責任は証言をした女性であるということになります。


結果、松本人志氏は自分で起こした裁判を”取り下げる”かたちで撤退しました。

ただその際、弁護士はただでは帰らず、かなり巧妙な手法を使って松本人志氏の弁護を果たしているのです。

本文に番号をつけ、それより下に詳細を記します。


松本人志氏と㈱文藝春秋らとの間における訴訟に関するお知らせ(八重洲総合法律事務所)

 当職らは、松本人志氏を代理して、㈱文藝春秋ほか1名を被告とし、松本人志氏の名誉を回復すべく、訴訟活動を継続してまいりました。しかしながら、この度、被告らと協議等を重ね、訴訟を終結させることといたしましたので、ご報告いたします。

 この訴訟終結に関する松本人志氏のコメントは、下記のとおりです。

 なお、報道関係者の方々におかれましては、偏向報道と受け取られる可能性のある内容や事実に反する内容を報道することがないよう¹、適切に対処されたく、念のため申し添えます。

 これまで、松本人志は裁判を進めるなかで、関係者と協議等を続けてまいりましたが、松本が訴えている内容等に関し、強制性の有無を直接に示す物的証拠はない²こと等を含めて確認いたしました。そのうえで、裁判を進めることで、これ以上、多くの方々にご負担・ご迷惑をお掛けすることは避けたいと考え、訴えを取り下げることといたしました。

 松本において、かつて女性ら³が参加する会合に出席しておりました。参加された女性の中で不快な思いをされたり、心を痛めた方々がいらっしゃったのであれば、率直に⁴お詫び申し上げます。

 尚、相手方との間において、金銭の授受は一切ありません⁵し、それ以外の方々との間においても同様です。

 この間の一連の出来事により、長年支えていただいたファンの皆様、関係者の皆様、多くの後輩芸人の皆さんに多大なご迷惑、ご心配をおかけしたことをお詫びいたします。

 どうか今後とも応援してくださいますよう、よろしくお願いいたします。

以上

松本人志氏代理人    .   

八重洲総合法律事務所 .

弁護士 田代 政弘

弁護士 栗原 正晴

弁護士 桶谷 侑平

松本人志氏およびその弁護士らは、この裁判、勝ち目はないと考え、「文春は無実・潔白」という結果で伝わるよりも、裁判自体を「取り下げ」にした方がいいと判断したということでしょう。

弁護士らは、裁判で勝つことよりも、松本の世間体つまり社会評価を守ることに注力したと言えます。

それが本文に如実に表れています。

1、偏向報道

偏向報道という言葉をあえて用いることにより、文春を含めたマスコミへの信用を揺るがし、万が一報道された場合の防衛線を張っている。

視聴者・読者が「マスコミの言うことなんて信用できない」という姿勢になってくれれば松本側の価値である。

また、松本氏を活動休止に追い込んだことをマスコミの責任に見せ敵愾心を煽っている。

視聴者・読者がマスコミは敵と考えれば、必然的に松本への同情、味方意識が芽生える。

2、物的証拠はない

特に意味のない「物的証拠はない」という言葉を用いることによってあたかも証拠自体がないという印象を読み手に植え付けている。

実際は、物的証拠がなくとも状況証拠と証言でも立件・立証は可能。

繰り返すが「物的証拠はない」という文言を用いる必要性はない。

ただし、”物的”とあえて付けなければならないのは、証拠がないと言えば、状況証拠と証言があることを否定することになり、嘘をつくことになってしまうから。

3、”女性ら”とは誰のことか

「女性らが参加する会合に出席していた」や「参加された女性の中で」にある”女性”というのがA子(文春に告白した人)なのか女性全般なのか、どちらとも解釈できる言い回しにして、本件についての責任をはぐらかしている。

文春はこの件に関して女性への謝罪を求めていたから裁判で勝てない以上、「お詫び申し上げます」という謝罪の文言を入れることは必須だった。

松本人志氏らは芸人と寄り集まって時々、パーティーを開いていたのは事実である。

しかし結局、弁護士らは読み手への印象を最優先し、本文で用いられる”女性”が被害者の女性ではなく、パーティーに参加した女性全般のようなイメージで、松本との密接な関係性という印象を薄めている。

4、「率直に」が示す潔さ

上記の理由から「率直にお詫び申し上げます」にある”率直に”という言葉を使って潔さをアピールしているが、謝罪までの言い回しはまったく潔くない。

5、慰謝料も和解金等は発生していないとあえて書き示す

「金銭の授受は一切ない」と無意味な内容をあえて用いることによって、あたかも相手と対等もしくは松本人志側が譲歩したような印象を読み手に与えるようになっている。

訴えたのは松本人志側で、彼が訴え、それを自分で取り下げたのだから慰謝料も和解金も発生するわけがない。

「終結させる」とか「取り下げることといたしました」とか、まるで自分主導のような印象を与える言い回しだが、要は「事実無根!訴えてやる」と意気込んだにもかかわらず「やっぱりやめます。すみませんでした」と独り相撲をしているようなものなのです。

この件を吉本らしくユーモラスに表現しているポストがあったので紹介します。

田代弁護士因縁の対決も、試合に負けて勝負に勝つ

弁護士らは最初から勝ち目がないとわかっていたようなムーブをしており、それは松本人志氏の弁護を請け負った最初の方から現れていました。

松本人志の弁護士は切れ者?試合に負けて勝負に勝つ気かもしれない

例えば、始め田代弁護士は「今後、裁判において、記事に記載されているような性的行為やそれらを強要した事実はなく、およそ『性加害』に該当するような事実はないということを明確に主張し立証してまいりたいと考えております」と発信しました。

この文章は、「記事に記載されているような性的行為やそれらを強要した事実はなく」の”や”の位置が紛らわしく、「記載されている性的行為や」なのか「性的行為やそれらを強要した事実」を意味しているのか解釈を二分させる文章になっていました。

嘘はつかないけど、なるべく誤解させていい印象を与えるという手法を取っているのです。


また、被害女性の個人情報を求めるという通常行われないことも大胆に行いました。

これによって、被害女性が個人情報の提出を拒否することにより、被害女性の存在そのものを私たち聞き手・読み手が疑うように仕向けたのです。

言うまでもないですが、たとえ弁護士であろうとも加害者側に被害者側は個人情報を教えることはしません。

被害者が自分の個人情報を教えるのは、自分の弁護士と裁判所です。

 

文春側の弁護士は、田代弁護士の宿敵、陸山会事件で対峙した喜田村弁護士です。

この時も田代弁護士(当時は検事)は証拠を捏造し裁判を有利に進めようとしましたが、喜田村弁護士に見抜かれて敗北を喫したのです。

今回も撤退ということで負けは負けですが、松本氏自身が仕事に復帰できるようになれば、勝負には勝ったと言ってもいいかもしれません。

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