日米首脳会談に笑いでオチをつけた石破首相
石破首相とトランプ大統領の日米首脳会談の反応の中でめちゃくちゃバズっているのがこちらの投稿。
NEW: Trump is visibly impressed after Japan Prime Minister Shigeru Ishiba shut down a reporter who tried baiting him over tariffs.
— Collin Rugg (@CollinRugg) February 7, 2025
Reporter: If the US places tariffs on Japanese imports, would Japan retaliate?
Ishiba: I am unable to respond to a theoretical question.
Trump:… pic.twitter.com/eOTtWT1CkG
石破首相と記者のやり取りを文字起こしするとこんな感じです。
記者(英語): もしアメリカが日本の輸入品に関税をかけたら日本は報復するんですか?
石破首相(日本語):仮定の質問にはお答えいたしかねますというのが、日本のだいたい定番の国会答弁でございます。
(会場の笑い声)
トランプ大統領:とてもいい答えだ。
(会場の更なる笑い声)
トランプ大統領:とてもいい答えだ。ワーオ、とてもいい。彼はわかってるよ。
こんな感じです。
トランプ大統領の深い感心の仕方が印象的でした。
アメリカ人の反応
共同記者会見の質疑応答の最後の最後で会場を大爆笑の渦に包んだ石破首相。
この場面を切り取ったXの投稿には9万越えのいいねがついており、その返しが秀逸だと絶賛するコメント多数です。
- 記者にナンセンスなことで自分を窮地に追い込ませないのは立派な芸術だ。
- 日本の総理大臣に完全に論破され、それを私たちの大統領も認めたと想像してみてください!爆笑
- シンゾーも誇りに思うことだろう
- メディアは石破首相を利用してトランプ大統領を攻撃しようとしたが失敗した(笑)
- わーっはっはは!こりゃ傑作だ!
というのも、投稿したアカウントはトランプ大統領を応援している人のものであり、反応しているのもトランプ支持者なんですね。
ですから、トランプ支持者としてはトランプ大統領を守ってくれた、日本の首相も強いじゃん、もしかして日米同盟最強?!と盛り上がっています。
日ごろからトランプ大統領の失言や失態を引き出そうと難しい質問を吹っ掛ける記者に対して、日本の首相が上手くやり過ごしたことを痛快に思った人が多いというわけですね。
トランプ大統領だったら論破しようと努めたと思いますが、石破首相は日本らしさを前面に出した、日本風ののらりくらりとした回答をユーモラスに使ってみたところにもアメリカ人は新鮮味を感じたのかもしれません。
日本人の反応
ところが日本の反応は真逆です。
「石破首相がアメリカ人に笑われてる、、、日本の恥!」
二言目には日本の恥。
ほんと好きですよね(笑)
こちらは石破首相に批判的な見方をしている人の意見ということも忘れてはいけません。
「馬鹿にされて笑われていることにも気づかない愚かな首相」
このやり取りと場の雰囲気を見て彼らの笑いを嘲笑ととるのは無理があるのではないでしょうか。
そもそもトランプ大統領の反応と先ほど紹介した投稿へのコメントを見れば英語圏の人たちがどう受け取っているかは一目瞭然です。
「unable toという言い回しは『能力がない』という意味もあるので、アメリカ人たちから無能と思われて笑われたのではないか?」
英語できないなら黙っていてください!(笑)
能力がないという意味ならcannotも同じですし、そこはニュアンスの問題でしょう。
それとも哲学でも始めるつもりなのでしょうか。
それにその言葉を選んだのは通訳者ですからね。
石破首相が自分で選んで言っているわけでもない。
状況の把握に努めてほしいものです。
石破首相は笑いを狙っていた?それとも偶然?
そもそもこれがユーモアやジョーク、つまり笑わせようとして言ったのか、そして狙い通り笑わせることができたのか、というのが結構重要だったりします。
石破首相に聞かないと本当のことはわかりませんが、たぶんジョークで言ったと思います。
それは彼の「定番の」という言葉選びから読み取れます。
もし、まじめな返答であれば「仮定の質問にはお答えいたしかねます」というところで終わっていたと思いますが、続けて「というのが日本のだいたい定番の国会答弁でございます」と言っていることから彼なりのユーモアで返したと見ていいでしょう。
ですから批判の中には仮定について答えられないのはうんぬんかんぬんと、仮定の定義や自分なりの関税対策を持論としてつらつらと述べている人もいますが、そういうことではないんですね。
これはジョークで、日本でいつも使われている定型文を引用しただけなのでこの返答の一語一句を吟味して評価することは時間の無駄であり、的外れな議論です。
ただ、この返しに問題があるとすれば質問の内容にまったく答えていないところです。
私はリアルタイムで見ていて、この返答をジョークだと受け取りましたが、その後、「冗談はさておき」と本題に入って答えるのかと思いきやそれで終わらせたので、これでいいのかと不思議な気持ちになったのは事実です。
記者らがさらに追撃で質問すれば、石破首相のことですから答えたとは思いますが、そこはアメリカ人。
空気を呼んだのでしょう。
笑いでうまくまとまったので聞き直すのは野暮だと思ったのか、そのままお開きとなりました。
Xの人気投稿などを見ているとわかりますが、アメリカではこういう映画演出的な上手い展開になったとき、それを尊重する美学があります。
偶然出来上がったシーンを大切にする文化です。
絶対ではありませんが、恐らくそういうことだろうと私自身は思っています。
「仮定の問題」はちゃんと通訳されたのか?
石破首相の「仮定の問題」という言葉が「a theoretical question」と訳されたため、「theoretical」を「理論的」と訳しなおし、「これでは理論的な質問には答えられない」と受け取られ嘲笑された(つまり思考力がない)、ニュアンスが間違って伝わっていると心配している人もいます。
その点についてはご安心ください。
theoreticalには理論的の他に、
- 理論上にのみ存在する
- 仮定上の
- 思索的な
- 空論的な
- 理論好きな
などの意味もあり、文脈から判断されます。
英語「theoretical」の意味・読み方・表現 | Weblio英和辞書
ネットで出回っている「理論的な問題」という訳は、主に文脈を考えないGoogle翻訳などによる単純な直訳です。
質問者は「if」を使っているため、これが仮定について言っていることも承知ですし、先ほどのコメント欄の反応を見ても十分真意は伝わっていると判断できます。
Exactly , the what ifs are irrelevant.
— TheFaddenTimes (@toberealornot) February 7, 2025
その通り。”もし”は関係ない。
ただ、石破総理が使った「定番の日本の国会答弁」という細かいところまでは通訳されておらず、「That's the official answer we have」だけになっています。
「仮定の問題には答えられない。それが私たちが持っている公式の回答です」
通訳者は声を明るく少し笑い含んだ感じにしてユーモアとしての意図を伝えています。
ですから、記者たちに日本らしさが伝わったとすれば、こののらりくらり感、
そしてアメリカ人の絶賛は「仮定の問題には答えられない」の部分、
全体的に冗談ぽく肩透かしを食らわされた返答から大体のニュアンスが伝わったと考えられます。
余談
もう一つ、石破首相が記者たちを笑わせたところあります
トランプ大統領の印象について答えたところです。
石破首相:「テレビで見ると個性強烈で恐ろしい方だという印象がなかったというわけではありませんが」
(会場笑い)
石破首相:「実際にお目にかかると、本当に誠実な、そして力強い、そして強い意志を持たれた・・・」
本人の目の前でこれを言うとは(笑)
それを言われたトランプ大統領の表情はこちらから見れます。
最初は勘弁してくれとおどけていますが、最後の方は真面目に感動しているようにも見えます。
問題発言のようにも思えますが、テレビで見る印象と会った印象が違うという感想は取り方によっては反トランプ界隈や懐疑的に見ている人に向けて「本当はいい人かも」と思わせるいいアシストになるかもしれません。
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