広告は閲覧数より高感度
閲覧数が多ければ成功というわけではないCMの話
マクドナルドが画像生成AIを使ったCMを公開しました。
制作は架空飴というAIで作った動画をYouTubeにアップしている人物に頼んだようです。
AI♡ポテト#月曜からポテトML250円#AIラブポテト
— マクドナルド (@McDonaldsJapan) August 17, 2024
※タップしてご覧ください pic.twitter.com/WFOUmHeJ0c
ただ、このCMあまり反応がよろしくないようです。
一部の生成AI擁護者の人たちは、悪評といえどもそれを理由に拡散されているから宣伝効果から見れば成功だなどと頓珍漢なことを言っていますが、どんなにインプレッションがよくても印象が悪ければそれはつまり逆効果ということです。
バズりと炎上は違うということを覚えておく必要がありますね。
興味深いのは日本人ばかりでなく海外のアカウントからも批判的なコメントがついていることです。
今回の「AIラブポテト」のCMには169万のインプレッションがありますが、いいねはわずか3000です。(比率にして0.18%ー2024年8月18日7:00時点)
対して「あの夏ナゲットの君に恋をした」のイラストはインプレッション183万にいいねが2万3千ついています。(比率にして1.3%ー2024年8月18日7:00時点)
もう一つ「Number_iラブポテト」のCMはインプレッションが96万にいいねが4万1千ついています。(比率にして4.3%ー2024年8月18日7:00時点)
インプレッションすなわち閲覧したにもかかわらずいいねを押さないということはそれだけ好感度が低いということになります。
観た人がたくさんいるのになぜいいねを押さなかったのか。
数字で見ても明らかですが最も参考になるのはコメントでしょう。
以下にどのような反応があったのかまとめます。
気持ちが悪い
AIが作った画像には全般的に「気持ちが悪い」、「不気味」との評価がつきやすいです。
それというのも、AIは綺麗な画像を作ることはできても登場人物の表情に感情が載っていないことが多く、なんだかマネキンみたいなのです。
また、遠近感や色合いも不自然で、人間が描くほどの繊細さがありません。
「怖い夢にうなされているときに見る景色」と表現する人もいます。
ちまたでは「不気味の谷」と呼ばれており、それを超えることができるか否かがAI画像の課題なのだとか。
たしかに登場人物とその服装、背景、建物や置いてある小物に脈略がなくなぜその場面にいるのか、ここはどこだ、と言い表すことの難しい違和感がいっぱいです。
人ははっきりわからなくても違和感に敏感です。
そして違和感にストレスを感じます。
矛盾や違和感をどれだけ排除できるかが脚本家、演者、作曲家、絵師、他様々なクリエイターの仕事であるのに対し、あえてその塊をぶつけてくる。
CMとして批判を受けるのは理解できます。
魅力がない
魅力がないのはCMとして致命的です。
ここでは商品と登場人物の二つの魅力について分けて説明します。
商品の魅力
このCMは何のCMかというと「マックフライポテト(以下ポテト)」です。
にもかかわらず、ポテトがとてもちゃっちい出来栄えとなっています。
他の画像に賛否両論はあるとしてリアルさはあり、立体感もあります。
しかし少女が持っているポテトは平面的であり、まるで切り抜いたポテトの写真を持っているようです。
ポテトだけ2Dに見えるんですよね。
これはもしかしたらAIではポテトを正確に生成できないため、ポテトの部分だけ張り付けたのかもしれません。
やはりポテトはマックの商品ですから、そこには正確性が求められる。
ちょっとの違いも赦されなかったのかもしれません。
そのせいで主役のポテトが文字通り薄っぺらくなってしまい、おいしそうに感じないのです。
登場人物の魅力
マックのCMには俳優や芸人、アーティストやアニメキャラクターなど、様々な年齢層にターゲットを絞った人物が起用されています。
マックの商品自体でなくとも、CMでコラボした著名人で好感を持って、もしくは応援する気持ちで店舗に寄る人も大勢いるでしょう。
しかしAIで作られたCMに出てくる登場人物には何の思い入れも愛着もありません。
顔の綺麗な一般人です。
しかもAIで作られた登場人物はその場限りでお別れでもう二度と同じ被写体が作られることはありません。
再び似たような者が作られたとしてもそれは似ているだけで別の人物です。
AIで作られたキャラクターとは何の思い出もありません。
ですから、AIのキャラクター目当てで買いに行く人はいませんし、「気持ち悪い」と悪評を建てられても擁護する人はいないのです。
しいて言うならば、クリエイターの架空飴氏のファンだけでしょう。
リテラシーの低い会社だ
画像生成AIには法律的な問題、倫理的な問題が山積みです。
AIは自身で想像して画像を描くのではなく、収集したデータをもとに生成します。
ともするとその収集元の絵の著作権は?肖像権は?と権利の問題を突き付けられます。
「人間だって今まで様々なものを見てきたから描けるんだろう?」という人もいるかもしれません。
よくいます。
それはそうですが、人間の場合必ずしも著作権・肖像権を侵害して学んでいるわけではないかもしれません。
人間は写真集やネット上の画像ではなく、自分の目で見て人物を記憶しているかもしれませんし、モデルがいたらその人に謝礼を払っていたり許諾を取っているかもしれません。
合意が成り立っているのです。
しかしAIのデータの収集の仕方は合意というものがありません。
そこが問題なのです。
また、人間の学習は法律で認められていますが、AIの学習はまだ法律的に発展途上です。
なぜなら本来はどこから学習したのか技術的に追跡できるはずなのにそれをはぐらかしている。
もし学習履歴を参照できるのであれば、それが膨大な量になろうとも本来は余すことなくするべきなのです。
そして生成AIに反対する人たちはそれを著作物の乱用、搾取だと考え、クリエイターたちを守るために声を上げています。
結局、元が養われなければそれを参考にするAIも学習するものが消滅または劣化し、本来のポテンシャルを生かすことができなくなります。
寄生虫みたいなものですね。
そういった問題があるにもかかわらず、AIを使ったCMを使うのはリテラシーが低いといわれても仕方がないのではないでしょうか。
お金がないんだな
俳優を雇わない、絵師も雇わないとしたらCMは安く作られているというのがSNSユーザーの感想の中に見受けられます。
ちょっと面白いと思ったのは、「マックで出すような安い商品には費用がかけられないのではないか」と言った疑問の声です。
マックは安いことが売りですが、それが品質が悪い、体に粗悪な代物といった印象を持たれるのは嫌でしょう。
無論、AI生成といっても全く費用が掛からないわけではなく、それ用のソフトウェアは必要ですし、調整作業も必要です。
今回は架空飴氏というクリエイターがいるのですからお金がかかっていないというのは少し違いますね。
ポテトやハンバーガーを思い出すきっかけに
数字や批評が顕著であるとはいえ、今回のAIによるCMが成功か失敗かは実際に売り上げを見るまでは断定はできないでしょう。
とはいえ総合的に見て効果的とも言い難い。
私はこの炎上騒ぎがなければマックについて思い出すこともありませんでした。
私はマックにもう何年も行っていません。
ジャンクとしてのおいしさはありますが、ジャンクにしてはちょっと高いなと思います。
割高ですし、健康にいいとも言えないですし、それなら倍の値段でおなかも心も満たされる他のハンバーガーショップに寄りたいとなります。
フライドポテトは冷凍食品のものでマックと変わらない味のものがあるんですよ。
値段は10分の1くらいでしょうか。
久しぶりにそっちが食べたくなりました。
それについてはこのCMのおかげかなと考えます。
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